日本から遠く離れたアメリカで “名作駅弁” を再現
皆さんはお気に入りの駅弁ってありますか?デパ地下で開催される “駅弁フェア” などに足を運ぶと、魅力的な津々浦々の駅弁がたくさん並んでいて、目移りしてしまいますよね。
駅弁って色々食べたくなってしまいますが、我が家は長野県びいき(※ブログ「不便さを楽しむ生活。」参照)なので、チャンスがあると必ず “おぎのや・峠の釜めし” を食べます。
つくり続けて約60年。
全てはホームでのお声かけから始まりました。
「何かご要望はありませんか。」今から約60年前、おぎのや会長である故・高見澤みねじは、自らホームに立ち、旅行者ひと りひとりの駅弁へのご意見・想いを聞いて回りました。
そこで、彼女はひとつの答えにたどりついたのです。
「あたたかくて、家庭的な楽しい お弁当が求められている」と。
お客様と向き合うその真摯な姿勢が、新たな駅弁開発のきっかけとなり、1958年、益子焼の土 釜に入った駅弁、「峠の釜めし」が誕生したのです。
1950年代、あたたかいまま食べられる「峠の 釜めし」は、常識をくつがえす画期的な駅弁でした。
その後、雑誌「文藝春秋」に掲載され、爆発的に売れるようになりました。
さらに 1962年、自動車旅行の増加にあわせて「峠の釜めし・ドライブイン(現荻野屋横川店)」を開設。
今でも各店にバスが到着・出発する際、 深々とお辞儀をする目迎・目送が行われ、店内で旅の疲れを癒すやすらぎと味わい深い思い出を提供しています。
小さな釜で炊き上げられた茶飯(ちゃめし)の上に、「うずらの卵」「栗」「ごぼう」「杏子」「椎茸」「筍」「鶏肉」「グリーンピース」「紅生姜」とたくさんの具材が少しずつ乗せられていて、なんとも満足感のある駅弁なのです。
長野に足を運ぶ際は、わざわざ店舗まで行って購入します。
そんな “峠の釜めし” ですが、私以上にこの駅弁を愛して止まないのが主人です。根っからのアメリカ人である主人ですが、この “峠の釜めし” の味が好き過ぎて、以前から「食べたい!食べたい!」と耳にタコができるくらい言われていました。
そんなこともあったので、先日日本へ一時帰国した際に、“峠の釜めし” を食べて、空いた釜をタオルでぐるぐる巻きにしてアメリカに持ち帰っていたのです。
ということで、前置きが長くなりましたが今回は “おぎのや・峠の釜めし” をアメリカでできる限り再現してみました。
上の具材は舌の記憶を頼りに作りましたので、本家と食べ比べるとどれほど再現できているかわかりませんが、私的にはかなり自信のある仕上がりになりました。
釜がなくても炊飯器や土鍋などでも作れますし、上の具材がなくても茶飯だけで十分美味しくいただけます。
ぜひ皆さんチャレンジしてみてください♪
目次
まずは上に乗せる具材の下ごしらえから
“峠の釜めし” を本格的に再現するには、実は結構時間と手間がかかります。まずは、前日に上に乗せる具材を仕込んでいきます。基本的にはほとんどの具材が煮物で、別々に煮付ける必要があります。
少々手間ですが、別々に煮付けることが大切なポイントとなります!
それぞれの具材の味付けを少しずつ変えることで、飽きがこない釜めしに仕上がります。
では、それぞれの具材について材料と作り方を解説していきます。
a. 紅生姜
本家は、一般的に売られている真っ赤な紅生姜ではなく、紫芋の色素を使った淡い色の紅生姜が使われています。こちらアメリカでも真っ赤な紅生姜は手に入りますが、今回は我が家の常備菜である「ラディッシュの甘酢漬け」の酢を使って紅生姜を作りました。
〈 材料 ・作り方 〉
・生姜 ;2片程度、皮をむき細切りに。
・「ラディッシュの甘酢漬け」(※)の漬け酢 ;適量、生姜がしっかり浸かる量。赤梅酢で代用可能。
・塩 ;ひとつまみ
① 細切りにした生姜を塩を加えた熱湯で1分ほど茹でる。
② 生姜を湯から揚げて、しっかりと水気を拭き取る。
③ 瓶などに入れた漬け酢に生姜を付けて、一晩冷蔵庫で寝かせて出来上がり。
〈 「ラディッシュの甘酢漬け」の材料・作り方 〉
・米酢 ;180ml
・砂糖 ;大さじ5
・塩 ;大さじ1、甘酢分。
※面倒な場合は、200mlの市販のすし酢で代用
・ラディッシュ ;適量、皮付きのまま1〜2mm程度の厚さに薄切り。
・塩 ;適量、塩もみ分。
① 薄切りしたラディッシュを塩でよく揉んでしんなりさせる。
② 10分程度置き、ぎゅーと絞って余分な水分を取る。(味見をして塩辛い場合は軽く水洗いをしてから)
③ 小鍋に米酢・砂糖・塩を入れて弱火で温めて、砂糖・塩をしっかりと溶かす。(沸騰してしまうと酸味が飛んでしまうので、熱し過ぎには注意)
④ 甘酢(漬け酢)がしっかりと冷めたらラディッシュを入れて1〜2日冷蔵庫に入れておく。
⑤ ラディッシュの色素が漬け酢に滲み出て、酢もラディッシュも全体的に綺麗なピンク色になったら完成。
b. 杏子(ドライフルーツ)
全体的に甘辛い味付けの釜めしの中で、甘酸っぱい干し杏子は味の重要なアクセントになります。また色合い的にも杏子があることで華やかになります。もちろん、今回はドライフルーツを購入しました!
c. グリーンピース
こちらも杏子と同様、釜めしの見た目を盛り上げる重要な具材です。本当はフレッシュな生のグリーンピースを使いたかったのですが、手に入らなかったので止むを得ず水煮の缶詰を使いました。
d. うずらの卵
私は生のうずらの卵を茹でましたが、缶詰などのうずらの卵で十分です。
e. ごぼう
ささがきにしたごぼうのシャキシャキとした食感は、釜めしの中でも主役とってもいいくらいに活躍している具材です。ごぼうをささがきにするのは面倒な作業ですが、細切りにしたごぼうとは食感が全く違うので、是非手間をかけてください!
今回は、ごぼうにコクを出すために鶏肉と一緒に煮付けました。
f. 鶏肉
釜めしの中で唯一のお肉です!あえて少し小ぶりにカットして煮付けることでご飯と一緒に口に入れることができます。
〈 材料・作り方 〉※ごぼうと一緒に煮付ける場合
・ごぼう ;1本、ささがきにして水にさらしておく。
・鳥もも肉 ;200g程度、皮や余分な脂身を取り除き1.5cm程度の角切りに。
・水 ;200cc
・サラダ油 ;小さじ1
・醤油 ;大さじ2
・みりん ;大さじ2
・酒 ;大さじ1
・砂糖 ;大さじ1
① 鍋にサラダ油を入れて、中火で鶏肉を軽く炒める。
② 水にさらしてアク抜きしたごぼうはしっかり水気を切っておく。
③ 鍋にごぼうと水・調味料を全て入れて、落し蓋をして15分程度煮て出来上がり。
(余ったら冷凍保存可能で、そのまま食べる以外に混ぜご飯の具材にもできます。)
g. 椎茸
本家の釜めしも椎茸だけは濃いめの味付けにしているので、私も佃煮のような濃い甘辛味に煮付けました。
ちなみに、私は本家の釜めしの中でこの椎茸が一番好きです!
〈 材料・作り方 〉
・干し椎茸 ;小さいもの6個
・干し椎茸の戻し汁 ;100cc
・醤油 ;大さじ1
・三温糖 ;大さじ1
・みりん ;大さじ1
・酒 ;大さじ1
① 戻した干し椎茸の石づきを切り取っておく。
② 鍋に全ての材料を入れて、落し蓋をして弱火で15分ほど煮て出来上がり。
h. 栗
栗の甘露煮も干し杏子と同様に味のアクセントになる欠かせない具材です。栗の甘露煮の瓶詰めなどが手に入るようでしたら、そちらを使いましょう。今回「くちなし」は手に入らなかったので、無着色で甘さ控えめに炊きました。
〈 材料・作り方 〉
・栗 ;10個、鬼皮・渋皮をむいておく。時間に余裕があれば2〜3時間水に付けておく。
・水 ;200cc
・砂糖 ;80g
① 鬼皮・渋皮をむいてアク抜きした栗をたっぷりの水(分量外)で柔らかくなるまで茹でる。
② 鍋に水と砂糖を入れて弱火にかけ、砂糖が溶けたら栗を加えて20分程度コトコト煮てできあがり。
i. 筍
本家では椎茸とは反対に、薄口醤油を使いあっさり関西風に味を付けています。ということで、私も薄口醤油を準備し、いつもの煮物とは違った上品な味に仕上げました。
〈 材料・作り方 〉
・茹で筍 ;1本、扇切りに。
・だし汁(昆布・かつお) ;500cc
・薄口醤油 ;大さじ2(醤油大さじ1+塩小さじ2で代用可)
・みりん ;大さじ2
① 材料を全て鍋に入れて、中火にかけ沸かせる。
② 煮汁が湧いたら落し蓋をして弱火にし、5分ほど煮て出来上がり。
一つ一つは大して時間のかかる具材はありませんが、なんせ少しずつ色々煮なくてはいけないのが手間ですよね。
なので、無理に全部揃えようとせずに、好きな具材だけ乗せても美味しくいただけます♪また、それぞれ単体で食べても美味しいので、残ったら次の日のおかずにもできちゃいます。
釜でも炊飯器でも土鍋でも美味しく炊ける!
いよいよ主役の茶飯作り
いよいよ日本から持ち帰った釜の登場です!食べ終わった後の釜はそのまま持ち帰ることができ、皆さん茶飯を作る以外にも白飯を炊いたり、焼きプリンを作ったり…色々な方法で再利用しています。
色々試してみたいレシピもありますが、ここはスタンダードの茶飯から!実は、「おぎのや」の公式サイトでオフィシャルレシピが公開されているのです。
何度かこのブログでもお話ししましたが、我が家は標高が高いエリアにあります。標高が高い場所は沸点が低く、パスタを茹でたりお米を鍋で炊くと時間がかかり芯が残りがちになります。
なので実は公式レシピを見ても成功する自信はあまりありませんでした…。
しかし!お水を少し多めにしてあげただけで上手にふっくら炊くことができました。サイトで丁寧に解説してくださった「おぎのや」さんに感謝です!
公式レシピでは調味料と水を合わせて180ccでしたが、標高の高い我が家でも、水を足して200ccにしたらちょうどよく炊き上がりました。
釜は一つしかないので、足りない分は炊飯器で炊きました。
2合分を炊飯器で炊いたのですが、調味料はレシピの倍にし、水加減は炊飯器の釜のライン通りにしました。
それでも美味しく炊き上がりましたので、釜がご自宅になくても “峠の釜めし ” が再現できることを立証しました♪
釜・炊飯器共に茶飯が炊き上がったら、あとは本家の釜めしの写真を見ながら用意した具材を乗せていきました。二日がかりで作り上げた “峠の釜めし” の完成です!
釜と同じく大事に持ち帰った包み紙やひも、香の物ケースを添えると雰囲気がさらに増しました。
本家の香の物は、「小ナスの漬物」「わさび漬け」「小梅漬け」「ごぼうの漬物」「キュウリの漬物」が少しずつ入っていて、これまた茶飯の味変に大活躍する助っ人なのです。
さすがにアメリカでわさび漬けは手に入らないので、今回は我が家の漬物「ポリポリきゅうりの醤油漬け」を入れました。
作り方は下の記事で紹介しています。
いかがでしたか?今回は、私の “峠の釜めし” 愛が詰まった内容でした。
全ての具材を揃えようと思うと面倒ですが、茶飯だけでも食べてみる価値があります!また、茶飯に鶏肉やごぼうをプラスして炊き込みご飯にしても美味しいです。
釜で炊くことでテンションがかなり上がりましたが(笑)、炊飯器で炊いた分も十分本家の味を再現できていました。
夕食の献立に悩んだ時は、茶飯にお好みの具材をたくさん乗せて、ドン!と食卓に乗せるだけで立派な夕食になってしまいます。
ちなみに我が家はこの茶飯に炒り卵と牛そぼろを乗せたり、すき焼き風に甘辛く味付けした豚バラなんかを乗せたりもします。
皆さんも冷蔵庫の食材とにらめっこして、 “峠の釜めし” をお好みの具材でアレンジしてみてください♪